トラブル問題と解決法
賃貸管理を行っていますと、借主様からいろいろなトラブル相談を受けます。内容によっては家主様にもかかわる部分がありますので、ぜひ知っておいて頂きたい内容です。
1. 入居後の住まい、隣人などとのトラブル
(質問)借りたのは空き巣被害の部屋。説明しなかった不動産会社に引っ越し費用を要求できる? 女性の一人暮らしなので、安全な住まいを条件に部屋を探し、契約しました。入居後、近所の人から、私が借りた部屋はこれまで2度ほど空き巣に入られたことがあることを聞きました。契約時にもそのような説明は受けませんでした。安全と信じて借りたのに、裏切られた思いと不安でいっぱいです。説明をしなかった不動産会社から、次の新居への引っ越し費用その他の費用を負担してもらいたいと思います。
(回答)不動産会社の故意や過失であれば責任を問うことも可能です。
不動産会社が空き巣の事実を知っていたのかどうかを、確認することが大事です。貸主が不動産会社に告げていなかった、あるいは空き巣自体が事件として警察に報告されていなかったなどの場合には、不動産会社も知らなかった可能性があるからです。
もし、不動産会社が空き巣の事実を知っていたのに、質問に対して「何もなかった」と答えていたのであれば、故意に事実を告げなかったと考えられます。この場合、不動産会社の責任を問えると考えられますので、新居への引っ越し費用等の損害を賠償してもらえる可能性があります。まずは、弁護士や司法書士などの専門家に相談してみましょう。
また、宅地建物取引業法では、不動産会社に、契約の判断に影響を及ぼすような重要な事実を告知する義務を課しています。
2.隣室からの音がとてもうるさくて寝られない。
(質問)入居してみたら、隣の人が夜中までテレビを大音量でつけていたり、友人を呼んで騒いでいたりして寝られないほどです。
(回答)管理会社あるいは貸主から注意してもらいましょう。賃貸物件の貸主には、入居者に対して貸した建物を使用、収益させる義務があります。しかも、ただ貸して使わせるというだけではなく、住宅の場合には貸主は入居者に最低限安心して生活できる環境を提供する、という義務も含まれていると解釈されます。
隣室の音がうるさく、安眠できないような状態は「最低限安心して生活できる環境」とは言いがたいと考えられますので、貸主は夜中に騒ぐ入居者にその行為を止めさせる義務があると考えられます。管理会社あるいは貸主に相談して、注意してもらうように依頼しましょう
3.上の階から水が漏れてきた。
(質問)ある日、天井からぽたぽた水が漏れてきました。調べてもらったところ、上階に入居している人が洗濯機を回しっぱなしで外出したのが原因とのことです。幸い、床が少し濡れたくらいでしたが、この件は管理会社に連絡したほうがよいのでしょうか?
(回答)後日のトラブル回避のために、すぐ連絡しましょう。
大きな問題になっていない場合でも、水漏れや結露などがあったときには、すぐに管理会社あるいは貸主に連絡をしましょう。
後日、その水漏れが原因で壁紙が剥がれたり、かびが発生した場合、水漏れがあったことが報告されていなければ、入居者の責任とされてしまう可能性もあるからです。日時が明確になる方法で、水漏れの周辺や濡れた床や家具などの写真を撮影しておきましょう。
4.入居中の設備などのトラブル
(質問)アンペア数が足りず、すぐブレーカーが落ちる。 引っ越した当初から何度もブレーカーが落ち、不便な思いをしています。パソコン内の大事なデータにもしものことがあったら大変だと思うので、電力会社に連絡して、アンペア数を上げてもらおうと思います。
(回答)まずは管理会社あるいは貸し主に相談を。
契約アンペアの変更は電力会社に依頼すればやってもらえます。共同住宅の場合、建物全体の電気容量が不足している場合もありますので、事前に管理会社あるいは貸し主に相談しましょう。
パソコンや家電製品を数多く所有している人は、物件見学時にアンペア数を確認しておき、入居前に契約アンペアの変更を依頼することで、入居後にブレーカーが落ちて困るトラブルが避けられます。
5.物件見学の時に設置されていたエアコンが取り外されていた!
(質問)入居してみたら、物件見学のときには設置されていたエアコンが取り外されていてありません。
(回答)契約前にしっかり確認しましょう。
エアコンなどの付帯設備の有無については契約前にしっかり確認することが大切です。物件見学時に設置されていても、前入居者が持ち込んだ設備かもしれません。契約前に確認した付帯設備の状況については、賃貸借契約書や重要事項説明書に記載されます。
この事例で、エアコンの設置が契約条件となっているのであれば、不動産会社を通じて貸し主にエアコンを設置してもらうよう要求できます。契約前に付帯設備についてどのような確認をしたのかを整理して、賃貸借契約書や重要事項説明書を改めて確認してみましょう。
6.入居してみたら給湯器が壊れていた。
(質問)引っ越した日の夜、風呂に入ろうとしたら給湯器が壊れていてお湯が出ません。どうすればいいですか?
(回答)すぐに管理会社あるいは貸し主に連絡を。
設備の不備については、管理会社や貸し主に連絡して、対処方法を確認しましょう。念のため、「故障などの際の連絡先はどこですか 」と聞いておけば、すぐに対応ができるでしょう。
また、入居後はできるだけ早いうちに室内を点検し、故障や汚れなどに気づいた場合には、すぐに管理会社や貸し主に連絡することが重要です。これは、その故障や汚れが入居前からあったのか、あるいは入居後のものかを明確にするためです。
7.付帯設備の交換・修理費用は入居者(借り主)が負担すべきものなのか?
(質問)賃貸マンションに備え付けの温水洗浄便座が壊れた。その修理を貸し主に申し出たら、修理できないので、費用折半で新しいものにしたいがどうかと言われました。どのように対応したら良いのでしょうか。
(回答)原則、貸し主負担と思われますが、契約内容を確認しましょう。
まず、賃貸契約を結んだ際の契約書がどのようになっているかを確認してください。その中で、こうした備え付けの機器に係る費用負担について、何も定めていなければ、一般的な使用の範囲内での故障や取り換えであれば、基本的に貸し主が負担をするものと考えられます。
8.前の入居者が設置した古いエアコンの取外し費用を負担してくれと言われた。
(質問)室内に設置されていたエアコンは、前の賃借人が設置したもので相当古いものですが、無償で使用して良いと、管理会社を通じて貸し主から言われ、そのまま使っていました。ところが、そのエアコンはやはり古く冷房など本来の機能を全く果たさなくなってしまったので、自分で新たにエアコンを購入することを決めました。
そこで、貸し主に「エアコンを新規に購入するので、古いエアコンの取外し費用を負担して欲しい。」と申し出たところ、貸し主からは「あれは無償で一年も貸しているものなので、取外し費用は借り主が負担するべき」と言われました。
やはり、取外し費用は借り主である私が負担するべきなのでしょうか。賃貸借契約の際には、エアコン故障時や、エアコン取替時の取外しや処分費用を含めた費用負担についての取決めはしていませんでした。
(回答)エアコン取替時などの費用負担について、賃貸借契約締結の前にしっかりと確認のうえ、取決めをしておくことが肝要です。
今回のようなケースにおいては、貸し主は前の賃借人がエアコンを残置した(所有権を放棄した)ことを容認してエアコンを占有しその物を次の借り主に使わせたということですから、民法第239条第1項により、貸し主がその物の所有権を取得しているものと考えることができるので、エアコンの取外しに係る費用は、エアコンの所有者である貸し主が負担するべきと考えられます。