[2901] 賃貸物件「家賃の供託!」 2014/11/03 

 不動産の仕事を長くしていますが、裁判所からアプローチ宛に書留が届いたのは初めてです。賃貸物件の家賃が差押えされた内容が細かく書いてありました。しかし内容に間違いがあったのです。

「債権差押命令」という難しい書類に、裁判所の書記官が「第三債務者は所有者に対し弁済をしてはならない」と記載してあったのですが、アプローチはあくまでも賃貸物件の管理者であり、借主ではないので第三債務者には該当しないからです。

 もしアプローチが賃貸物件を借りて、家主様に家賃を支払う立場であれば債権者はアプローチに対して家賃を差し押さえる事が出来ます。しかし入居者の管理をしているだけですと、家賃を預かっているだけなので債権者に対して支払う義務は発生しません。

 債権者からは「家賃を直接振り込むか、供託をするか」と迫られました。供託するには法務局での手続きが必要です。裁判所と債権者に対して同封されていた陳述書を書いて送付しました。

 説明しますと「供託」とは、供託所(法務局等)に金銭等を寄託することですが、法令で定められた供託原因がなければ手続を取ることはできません。借家人が家賃を供託する場合は、以下3点のいずれかの供託原因が必要です。

1.家主が家賃の受領を拒んでいる場合
2.家主が家賃を受領することができない場合
3.家主を確認できない場合
4.その他の事情
(今回のように家賃が差し押さえられた時)

 借家人が家賃を供託すると、供託所から供託通知書が送付されてきますので、家賃が供託されたことが分かります。そして、家主はいつでもその払い戻しを受けることができます。これを還付請求といいます。

 供託金の還付を受けるためには、供託所に備えてある供託物払戻請求書に所定の事項を書き込み、送付されてきた供託通知書と印鑑証明書を提出すれば簡単にできます。

3.は相続など発生し相続人がわからない時、「私が債権者だ」と云う者が複数あるときなどで相手がよくわからないときなどです。

 供託する場所は、履行しなければならない場所を管轄する法務局です。すぐに相続後の新しい家主(所有者)がわかれば、その人に家賃を払えばいいのですが、家主の相続人が誰か、全くわからないということもあり得ます。

 しかし、受け取らないから、相続人がわからないからと、 供託もせずに放っておくと、後から契約解除の理由となりかねません。 少し面倒ですが、毎月供託するしかありません。

 今回のケースの場合、結果的に賃貸物件の家賃差押命令が出るように裁判を起こしたものの事実とは違っていたために意味をなさないものだったと判明しました。どこでどう間違ったのか「アプローチが借主では無いので、家賃を支払う義務が無かった」からです。

 一般的に家主様と借主様と間での「家賃を上げる・下げる」ことで話が付かない時に供託する事があるとは知っていましたが、不動産会社が関わる事があるのですね。初めての経験でした。

 別件ですが、以前に勤めていた会社で借主である法人が、家賃を供託していた事がありました。家主様に社宅を建てて貰って10年一括借り上げをしていたのですが、景気が急に悪くなり契約途中で家賃の値下げを申し出てきていました。しかし契約書とは違うので、家主様は当然に承諾しません。法人は家賃を一方的に引き下げて供託しました。

 結果的に、家主様は法人が退去してしまうと別の借主を見つけるのが難しいので、泣く泣く承諾したのでした。契約書に何と書いてあっても景気の動向によって、契約条件などどうにでも変わってしまうという典型的な例です。

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